2004年11月09日

覚えていますか?

去年の暮れも押し詰まったある日、私たちは初めて一緒にお芝居を観にいきました。
寺山修司原作の、それは「奴婢訓」という舞台でした。

その少し前・・あの頃の私は・・この人生の一大事とも言えるような出来事にぶつかっていて、
まだ少し不安定さを引きずったまま、ひさしぶりの再会でした。

貴方が「そんなに強がるなよ。一人で何もかも抱え込むなよ。そんなんじゃ疲れるだろ?」
そう言ってくれたにも関わらず、私は素直になれなくて、
結局「甘えさせてね」と口に出来るまで、1年もかかってしまったね。

私が強く強く「ご主人様」という存在に焦がれ、欲していたのも、あの頃だったかもしれない。

あのお芝居の冒頭に「ご主人様製造椅子」というのが出てきて、
そこには全裸で全身白塗りの男が座っていた。
「おい、ちんこが見えるよ。」貴方が耳元で囁いて、私に双眼鏡を手渡した。
しんと静まり返った客席で私は思わず吹き出してしまって、
それでも受け取った双眼鏡でしっかり"それ"を見たっけ・・。


その館には、絶対君主が居るはずなのに、何故か不在。
奴婢達は、順番に「主人」になっていく「主人ごっこ」を始める。

寺山修司原作のお芝居には独特のグロテスクさがあって、難解でもあったけど、
主題は「主人が居ないことが不幸なのではなく、主人を必要とすることが不幸なのだ」
というものだった。

初めから内容を深く知ってたわけでもなく、貴方が誘ってくれたお芝居は、私には
たまたま観た感が強かったけど、そのとき私はふと思った。
「私は不幸なのかな・・。」


あれから春が来て、夏が来て、秋が来て、また初冬を迎えようとしています。

気がつけば、いつの季節も、貴方は変わらず私の見上げる空に居てくれた。
 ・・お月様なんだから、当たり前だね。

そして私がこの目を瞑りさえしなければ、きっとこれからもずっと、
貴方は私の空高く、その冴えた光を湛え続けてくれるだろう。


今の私は、「ご主人様」を必要としていません。 私が必要なのは、貴方。
今の私は、「ご主人様」を欲していません。 私が欲しいのは、ただ貴方。
posted by sizuku at 02:43| Comment(6) | TrackBack(1) | 銀色の雫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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