2004年12月27日

「魂のいちばんおいしいところ」 谷川俊太郎

神様が大地と水と太陽をくれた
大地と水と太陽がりんごの木をくれた
りんごの木が真っ赤なりんごの実をくれた
そのりんごをあなたが私にくれた
やわらかいふたつのてのひらに包んで
まるで世界の初まりのような
朝の光といっしょに

何ひとつ言葉はなくとも
あなたは私に今日をくれた
失われることのない時をくれた
りんごを実らせた人々のほほえみと歌をくれた
もしかすると悲しみも
私たちの上にひろがる青空にひそむ
あのあてどもないものに逆らって

そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた
――――――――――――――――――――――――――――――
貴方の魂のいちばんおいしいところは、ちょっと苦い。

ピリっと痛む程に、ちょっと辛い。
つんと涙が零れそうに、ちょっと酸っぱい。

 そして ・・ほんのちょっとだけ甘い。

欲しがりの私が、いつも欲しい欲しいと駄々をこねても
なかなか貴方はくれないけれど
ときどき貴方はふと思い出したかのように、それを差し出す。

ぁぁ。ぺろり。 ・・触れた私の舌先は、たちまちに痺れてしまう。

そうすると、
いつだって、さも満足げに貴方はそれをすぐに引っ込め、

私の中には、貴方の魂のとろりとした感触だけが残るのだ。

貴方の魂のいちばんおいしいところは、
まるで、私が好きな貴方のあれとおんなじ。とっても不思議な味がする。
posted by sizuku at 04:42| Comment(4) | TrackBack(0) | 俊太郎world | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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