2005年05月15日

強欲

最後の最後に、彼がやっと正常位で挿入してくれる。
何時間も彼と居て、さんざん苛めて貰って、
やっと普通の女として彼に向き合えるのかと思うとき。

正常位は当然、私が下ではあるけれど、私の中では、
ごく普通の男とごく普通の女の、ごく自然な体位だという感覚がある。

ぁぁ、だから、抱き締めたいの、抱き締めさせて欲しいの・・と、
私は当たり前に、彼の身体に手を伸ばす。

「だめだ。手は上に。」と、彼が言う。

私ははっとして、仰向けのままで、仕方なく腕を自分の頭のほうへ伸ばす。
「ぁ。ぁぁっ。」・・そして、私はそのまま突かれる。

またすぐに私の手は、彼の腕を、彼の身体を求めて彼のほうに伸びてしまう。
「ほら。手は?」彼は私に突き立てながら、冷静なまま問い掛ける。

「ぁぁ・・はい。」「出来ないなら、止めるよ。」・・「ごめんなさい。」

抱き締めたいの。ぎゅってしたいの。
貴方にしっかりしがみついて、イきたいの・・。

けれど私は彼の言うまま、自分の手を頭上に戻す。
 ・・戻すしか、ない。

寝たままのバンザイの形で、自分の両手をきつく組んだり、
ヘッドボードやシーツを強く握り締めて、耐える。

ぁぁ、だから。こんなときこそ、ただ簡単に括るだけでいいから、
私の手首を拘束してくれればいいのに・・と思う。


私から、私の自由を奪って思い通りにすればいいじゃない。

・・そのほうが・・楽。
 ぁぁそうなの、私のような甘えた女には、そのほうが楽・・。

拘束されているわけでもなく、押さえつけられてるわけでもない。
なのに私は、彼のたった一言で、自らの手を彼から遠ざけ、ただ犯される。

「なに? これはなんなの? ぁぁ、なに? なに?」

どこかでとても不自然さを感じながら、気づくと私はものすごく興奮している。

またたまらなくなって彼に伸ばした手を、今度は彼が叩き、振り払う。
「止めて欲しいのか?」

私は首を振る。
「ぁぁ、抜かないで。お願いっ。ぁぁ、そのまま。ぁぁ、突いて。突いて。」

「ぁぁ。ぁぁ。・・いい、いいっ。・・ぁぁ・・ううん、止めないでっ。」

そんなとき、私の中では、"いい"と"嫌"がごっちゃになっていて、
もうわけがわからなくなっている。

意識朦朧となりかけて、ふと彼と目が合う。
真正面で、彼が言う。

「おまえは穴。ただの穴なんだよ。」


ぁぁっ。そうなんだ、私は穴なんだ。
ただの穴。穴。穴。

私がひどい言葉や、下品な言葉に興奮するのは、たぶん、
罵られたり嘲笑われたする状況に感じる、ヒロイズム的感覚ではないと思う。
私は妄想癖があるけれど、
現実の行為の中では極めてリアリストだと思っている。

私が興奮するのは・・そこに、私の真の願望や欲望があるのを、
彼に見抜かれていることを感じるからだろう。

穴。
・・そう。私はずっとそれになりたかったんだ・・。
・・私はずっと、ただの穴になりたかったんだ・・。

彼はもともと無口なほうで、
ねちねちとありがちな言葉責めをするタイプではないけれど、
ときどき呟くように発する言葉が、こうして私の核心をついてくる。

「イきそう。ぁぁイきそう。・・イかせて。お願い、イかせ・・ ぁっ。」

彼に抱き締められることなく、彼を抱き締めることさえ出来ないまま、
それでも私は、この上ない絶頂感を味わう。

あんなに気持ちのいいセックスを、私は彼以外としたことがない・・。


私はときどき自分の記憶が飛ぶほどに興奮してしまうので、
いつも彼との行為や、彼の表情、その言葉のすべてを、
逐一正確に覚えているわけでもないのだけれど、
私が覚えている限り、どんなときでも、何をしてても、彼は冷静さを失わない。

私に何かを思い知らせるなんて、
彼にとっては、赤子の手を捻るより簡単なことなのかもしれない。
そしてでもそれは、実のところ、特別、彼の趣味でもないのかもしれない。

でも、だったら・・彼は本当のところ、何に興奮するんだろう。


私は彼自身に、もっともっと興奮して欲しいと思う。
どうしたら彼がもっと興奮してくれるだろうと、いつも考えてる気がする。

だけどそれは、
彼をもっと気持ちよくしてあげたいなんて、殊勝な気持ちからでもないような。

詰まるところ、彼がもっと興奮してくれたら、気持ちイイのは私なのだ。

・・どこまでも浅ましく強欲な変態女。
posted by sizuku at 18:30| Comment(6) | TrackBack(1) | 銀色の雫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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