2006年10月23日

乾電池

日も暮れ、辺りはすっかり暗くなっていた。
たまたまある大学のキャンパスを、二人で歩く機会に恵まれた。
そんな機会は滅多になくて、私ははしゃいでいた。

私たちは、キャンパス内の古めかしい研究棟のひとつに忍び込んだ。
特別な目的があったわけでもなく、
時代を感じさせるその古めかしさに惹かれ、内部も見てみたくなったのだ。

時折、人の気配がする。
悪いことをしているとも思わなかったが、勝手に忍び込んでいるだけに
私は「私たちは、何者に見えるだろう。」と、怪しまれるのが少し怖かった。

廊下に置かれた台の上に古い乾電池が4本、置き捨てられていたのを、
そのとき確かに私も見ていた。

建物中央の階段のところまで来ると、そこには古いソファーが放置されていた。

「手をついて、尻を突き出せ。」彼が言った。
「ぇ。ここで?」 ・・「そう。ほら、早く。」

ほんとうは手をつくのも躊躇われた。
それほどにソファーは埃をかぶっていたのだ。
けれど私は手をついた。

背後から、スカートは捲り上げられた。
いつものように、彼は容赦なく私のストッキングを股のところから破いた。

あのビリビリとした感じが、私にはいつも恐ろしいような、
それでいてとても待ち遠しかったような、不思議な感覚なのだ。

もう充分過ぎるほど濡れた股間に、
私は不意に思いがけない冷たさを感じた。
「あれだ。」 ・・いつの間に、彼はあれを拾っていたのだろう。

ほんの僅か、痛みを感じた。

けれど私は、そんな場所で、「誰か来るのでは?」という緊張感の中で、
弄られることに興奮していて、
実際何をされているのか、あまり冷静には考えていなかった。

「ほら、行くぞ。」 また不意に、彼が私の股間から手を引いた。
「はい。」 ・・これが私たちの「普通」なのだ。
どんな場所でも、私は彼の気の向くままに弄られて、気が済めばそこまでだ。

歩き出すと私は、なんだか「その辺り」に違和感を感じていた。
「ぁ・・の。」「どうした?」「何か・・おかしな感じ。」「どこが?」
「あの辺。」「あの辺って?」「・・どっちだろう。・・どっちか。」

曖昧だった。正直わからなかった。どっちだろう。・・前?・・後ろ?
どちらかに、あれが入っている。
足を出す度に私は「そこに何かが入っている」のを感じた。

けれど恐ろしくて、それをきちんと尋ねることも出来ず、
私は、彼の手にしがみつくようにして一生懸命歩いた。
キャンパスを後にして、大通りを歩きながら思っていたのは、
「人前では、落とせない。」

そのまま電車に乗った。和食屋さんを選んで食事もした。
座るときには、何故か体重をかけるのが怖い気がした。
真っ直ぐに座ると、身体の内側に窮屈な痛みを感じたのだ。

ホテルで、
私の「後ろ」から、あの捨てられていた古い乾電池が取り出された。

まさかそんなことがあっても、1本だけだと思っていたのに・・
部屋を出る段になって、私がごみ箱の中の乾電池を数えるとそれは3本だった。
「3本も・・。」

「あそこに乾電池は何本あった?」と彼が笑った。
「・・4本。」 ・・ぇ。ぇ。最後の1本は、まだ、私の中?
ぇ。ぇぇぇ・・。すっかり身支度も整え終わったのに・・。

「どうか抜いてください。」
私は再びスカートと下着を脱ぎ、他はそのまま、下半身だけ剥き出し、
中途半端に惨めな格好で、四つんばいになるしかなかった。

   ――――――――――――――――――――

そこいら辺に置き捨てられていた乾電池。
いつからそこに捨てられていたのか、誰が捨てたのかもわからない、
言ってみれば、ゴミ。

あんな場所で、あんなふうに仕込まれて。

大方の「普通」なら、ただでさえ、それは「あり得ないこと」なのに・・

「おまえには1本なんて甘いだろ。そんなに甘やかさないよ。」
彼がそう言って笑ったとき、

私は馬鹿だから、苦しくなるくらい嬉しくて、嬉しくてたまらなかった。
posted by sizuku at 05:47| Comment(13) | TrackBack(0) | 銀色の雫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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