2004年06月27日

「消えた女」

生まれて初めて這い蹲って男の足の指を舐めたとき、彼女は泣いた。

 男は女を床に平伏させ、黙って目の前に足の指を突き出した。
 女は男の足の指を咥えながら、悔しさと惨めさに泣いていた。

私は思った。
彼女は泣かされたというよりは、むしろ泣きたかったのではないか。

不思議なことにその頃、彼女の傍には彼女にだけ見える、
もう一人の彼女が居たらしい。

 女は自分が床に這い蹲って男の足の指を舐めているのを、
 その女に見られることが、何より悔しくて惨めでたまらなかった。
 そして泣きながら昂ぶって、次第に気持ちがよくなっていった。
 そんな女に、男は宣告した。「お前はそういう女。」

その言葉は、男が彼女にかけようとした呪文だったのかもしれない。
そのときから男の足の指を舐めるのが、彼女の生き方になった。

今の彼女は、あの頃とは違う男の足の指を咥えながら泣いている。

「相変わらず、悔しくて惨めなの?」
・・私の問い掛けに、彼女は首を振った。

「今はその人の足の指を咥えさせて貰えるのが、嬉しくてたまらないの。
 その指が愛しくて愛しくてたまらなくて、私、涙が出るほど幸せなのよ。」

いつしか私の目の前からは、
あの頃の、何かに憑かれたような彼女が消えていた。

そしてこれまた不思議なことに、
彼女の傍からは「あの女」が消えていたらしい。
posted by sizuku at 23:48| Comment(3) | TrackBack(1) | 銀色の水鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『消させた男』とも読めるような‥
sizukuさんの本領発揮で‥ 嬉しい‥。。。
やっぱり、一言で言えば『いばら姫-コンステレーション』だと思うのです。
河合隼雄さんの本を読んだ方なら‥すぐに納得なんですけど‥
コンステレーシヨンは単純には「星座の位置」を表すんですけど、
人知を超えた、時空の共時性‥
あぁ‥ また長くなるので‥
明日、(もう今日ですネ(^^;;;)以降に記事にします。
m(_ _)m
今、私の心‥ 歓びに震えてています‥
Posted by thorn_rose at 2004年06月28日 02:23
>thorn_roseさん。
コメントを拝見して、ドキリとしました。
「消させた男」・・自分ではそんな言葉(表現)は思いつかなかったのです。
(自分の文章ながら)thorn_roseさんに言われて、あらためて読み返すと、
ぁぁ、もしかしたら、そういうことなのかもしれない・・などと思ってしまった。^^;
「彼女」や「私」から「私」や「彼女」を「消させた男」・・ってことなのかなぁ。(’’)

thorn_roseさんの豊かな感性には、私、いつもとても刺激されています。
・・ありがとうです。m(*..)m

「本領発揮」という言葉もなんだかくすぐったいのですが・・
なんだろ・・まぁこんな得体の知れなさが私の本領ってことで。(笑)
Posted by sizuku at 2004年06月29日 01:21
トラックバック、ありがとうございました。
私の口からは、やっぱりうまくいえなくて‥<“コンステレーション”
訳のわかんない記事で、本当に、申し訳ありません。m(_ _)m
どうか、一度、河合隼雄さんの本を読まれてみてくださいネ"^_^"
きっと‥ sizukuさんも、ひきこまれるんじゃないかナ‥ ナンチャッテ‥(^^;
m(_ _)m
Posted by thorn_rose at 2004年06月29日 14:15
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